ODのサブタイプについて

【起立直後性低血圧】

第1に多いタイプは、起立直後性低血圧です。

英語ではinstantaneous orthostatic hypotension、INOH、アイノーと言います。

「私はアイノーを知っている」と英語で言うと、アイノーアイノーです。これは覚えやすいと思います。

 

アイノーは、起立直後に一過性の強い血圧低下があり、同時につよい立ちくらみと全身倦怠感を訴えます。血圧回復時間が25秒以上であれば、アイノーと診断できます。

アイノーには、軽症型と重症型がありますが、起立時の血圧低下が強く、収縮期血圧が15%以上低下したままであれば、重症型と診断します。

アイノーの起立時のノルアドレナリン分泌は低下しており、重症型ではその障害が顕著です。

小児では代償的な頻脈を認めます。

 

【体位性頻脈症候群】

2番目に多いタイプは、体位性頻脈症候群です。

英語でpostural tachycardia syndrome、略してPOTS、ポッツと言います。

ポッツは起立時の血圧低下はなく、起立時頻脈とふらつき、倦怠感、頭痛などの症状があります。

 

起立時の心拍数が115以上、または起立中の平均心拍増加が35以上あれば、ポッツと診断します。起立中に腹部や下肢への血液貯留に対して、過剰な交感神経興奮やアドレナリンの過剰分泌によって生ずると考えられています。

 

【血管迷走性失神(vasovagal syncope)】

3番目は、血管迷走性失神です。

英語でneurally-mediated syncope、略してNMSといいます。

起立中に突然に収縮期、拡張期血圧が低下し、症状が出現します。

発作時に徐脈を起こす場合もあります。

通常は、起立中に過剰に頻脈が起こり、そのため心臓が空打ち状態となり、その刺激で反射的に生ずると考えられています。

 

したがって、アイノーやポッツでもNMSを起こります。

失神発作を主訴とする患者の検査陽性率は、欧米では20~64%と報告されており、珍しい疾患ではありません。

 

【遷延性起立性低血圧】

4番目は、遷延性起立性低血圧です。

起立直後の血圧反応は正常ですが、起立数分以後に血圧が徐々に下降し、収縮期血圧が15%以上、または20mmHg以上低下します。

頻度は余り多くありません。

静脈系の収縮不全と考えられ、拡張期圧は上昇し脈圧の狭小化を招きます。

日本小児心身医学会編 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン(改訂版)では、以下の新しいサブタイプが記載されていますので、紹介します

 

【起立性脳循環不全型】

5番目は、脳血流低下型(起立性脳循環不全型)です。

これは、起立中の血圧心拍変動は正常内ですが、起立中に脳血流が低下して、それに伴う様々なOD症状が出現します。診断には、脳循環を測定できる特殊な装置(たとえば近赤外線分光計(near-infraned spectrocopy;NIRS)を必要とするため、一部の医療機関でしか診断できません。診断基準も国際学術誌に発表されています。

 

【高反応型】

6番目は、高反応型です。
これは、起立直後に一過性の著しい血圧上昇を起こし、それに伴う様々なOD症状が出現します。診断には、一心拍ごとに血圧を測定できる特殊な装置(たとえば非侵襲的連続血圧測定装置(Finometerなど)を必要とするため、一部の医療機関でしか診断できません。診断基準も設定されています。
これに加えて、
7)起立性高血圧型 も報告されています。
これは、起立後に臥位よりもかなり高い血圧になるタイプです。やはりOD症状が出現します。

 

まだ他にもタイプはあると考えられますが、現時点ではこの程度です。
以上、サブタイプについて説明しました。

ODの多くは、末梢血管交感神経活動が低下していますが、それはなぜでしょうか?
成人では糖尿病やその他の代謝性疾患によって二次的に交感神経が障害され、その結果起立性低血圧を合併しますが、小児や思春期の起立性低血圧においてなぜ交感神経活動が低下するのか、その原因はわかっていません。

低血圧研究で有名な本多和雄先生は、ODの遺伝傾向を指摘されていますので、体質的に交感神経機能が悪い人がなりやすいと思われます。