起立性調節障害、以下、ODと言いますが、ODは思春期に起こりやすい自律神経機能失調と考えられており、急激な身体発育のために自律神経の働きがアンバランスになった状態と説明されています。
ODの子供たちをよく診ていると、起立時に血圧がひどく低下して脳貧血を起こす症例もあれば、血圧に異常を認めない症例もあります。
また、心理的側面から見るとODは、過剰適応な性格であり他人に気遣いして心理的にストレスをためやすい傾向があります。
そしてODの約3割は不登校を合併しています。
このように、ODと一言でいっても病気の本態は同じではなく、それぞれの子どもについて、からだと心の両方からアプローチするという、心身医学的な診療が必要です。
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人が急に立ち上がるとひどいめまいや立ちくらみを起こすことがあります。
また長時間の起立中に気分不良となり、冷や汗が出て、しゃがみこんだり、ひどい場合には意識がなくなったりする場合もあります。
このような症状を一般的には、脳貧血、あるいは失神前状態とか呼びます。
これは血圧が低下し脳の血液循環が悪くなったために生ずる現象です。
健康な人でもたまにある症状ですが、立ちくらみの程度や頻度が強くなると、起立が困難になり、日常生活が大変に損なわれます。
日本では、昭和30年頃から研究されていましたが、最近では欧米でも注目され、orthostatic intolerance、起立不耐性と呼んで研究が進んでいます。
長期間の宇宙飛行から地球に帰還したら、起立耐性が悪くなるためにこの研究がされているのです。
人が起立すると血液は重力のために下半身に移動します。そのため動脈、静脈のいずれの血管系でも、血液の重力、すなわち静水圧によって血管腔が拡張するため、血圧が低下します。
また下半身に血液が貯留するため心臓に還る血液量が減少します。
これに対して健常者では、代償機構が作動し交感神経末端からノルアドレナリンが分泌され、血管収縮が起こり、血圧が維持されます。
ところがODでは、起立直後すぐに活発化するはずの交感神経が作動せず、また循環血漿流量も少ないことと相まって、血圧が低下したままになります。
一方、心臓は血圧を維持するために心拍数を増加させ、起立中に頻脈を起こします。
【図3】このメカニズムは症例によって少しずつ異なっているため、ODには数種類のサブタイプがあります。
タイプ別に適した治療が必要です。