起立性調節障害には、おもに以下のような症状がみられます。
・朝に起きられない
・立ちくらみ
・全身倦怠感
・食欲不振
・立っていると気分が悪くなる
・失神発作
・動悸
・頭痛
・夜になかなか寝つけない
・イライラ感・集中力低下
以下に詳しくみていきましょう。
《朝に起きられない》:
起きようと思っても身体を起こすことができない。目は醒めても身体がだるくて動かない。なかには、なかなか目が醒めず保護者が無理矢理起こしたことも覚えていないことがある。この場合には睡眠障害といえるものもある。
《立ちくらみ》:
急に立ち上がったときに目の前が暗くなったり、白くかすんだりする。とくに午前中に強い。風呂から上がるときにも起こりやすい。
《全身倦怠感》:
身体が重たくてだるい。とくに午前中に強く、午後から程度が軽くなり、夜にはほとんど感じなくなる。
《食欲不振》:
午前中は食欲がない、とくに朝起きた後は気分が悪くて食べられない。
《立っていると気分が悪くなる》:
起立した状態で何か作業をする、通学など電車で立っているなどしたときに、気分が悪くなり立っていられなくなる、あるいは倒れそうになる。ひどい場合には気を失ってしまう(失神)。その際に冷や汗が出たり動悸を伴ったりすることもある。
《失神発作》:
気を失って倒れてしまう。その場合、前兆(目がちかちかしたり、目の前が見えにくくなったり、気分不良、冷や汗、動悸など)を自覚する場合もあれば、前兆もなくいきなり気を失う場合もある。人によってはくり返すこともある。
《動悸》:
胸がドキドキと心臓の拍動が速くなる。とくに午前中に起こりやすく、立ち上がったときや階段を上ったりする際に多くみられる。
《頭痛》:
起立性調節障害の子どもの頭痛は、起立性調節障害による頭痛、片頭痛、緊張性頭痛の3つが混在していることがあり、見分けが難しい。起立性調節障害による頭痛は朝、起き上がってから出現し、午前中に多く、午後から楽になる、痛みの性質や状態は片頭痛のようにズキズキすることもあるし、頭重感のこともある。片頭痛は、午前午後など時間に関係なく発症し、脳に心臓があるかのようにズキズキし、目がチカチカして吐き気や嘔吐を伴うことがある。片頭痛は1~3日持続することもある。緊張性頭痛は精神緊張、僧帽筋や頸部筋の緊張を伴い、肩こりが強く頭を締め付けられるような痛みが多い。タイプによって処方薬も変わる。
《夜になかなか寝つけない》:
起立性調節障害は夕方から夜になると気分がよくなり、夜には目がさえて寝つけない。布団に入ってもいつまでも眠くならない。副交感神経(身体を休めるはたらきをする)は夜に活動が増え、朝に活動低下するという日内リズムがあるが、起立性調節障害では夜に活動が増えないので、眠くならない。退屈なのでついついテレビやゲームをやってしまう。保護者からすると、夜更かしの朝寝坊、怠け者、という印象をもってしまう。
《イライラ感・集中力低下》:
午前中はほとんどといってもよいほど頭がまわらない、授業にも身が入らない、思考力が低下し考えがまとまらずイライラする。午後からは思考力は回復なるが、勉強が遅れて宿題がたまるのでイライラ感はなくならない。
小学校高学年から中学生の思春期前後の子どもでは、このような朝起きの悪さ、たちくらみ、頭痛、腹痛、全身倦怠などの身体不調を訴えて小児科を繰り返し受診することがあります。
しかし一般的な診察や血液検査では該当する異常を認めない場合、多くは起立性調節障害(OD)と診断されます。
起立性調節障害は、思春期で最も起こりやすい疾患の一つであり、頻度は約5~10%と大変に多いものです。
ODの子どもは、朝起きが悪く、なかなか起きません。一日中ごろごろして、夕方になって元気になり、逆に夜には寝付けません。学校を欠席したり引きこもりがちになるので、最近、注目されています。
このような症状を訴える子どもたちに小児科医が関心を寄せるようになったのは1960年代のことです。
しかし、ODの増加が問題とされながらも、科学的な検査値として確かめる方法がいささか不十分でした。
90年代になって起立直後の数秒間の血圧を測定する検査機器が開発され、目まいや立ちくらみを起こしているとき、あるいは疲労感の身体機能の異変を客観的に評価することができるようになりました。
その結果、一人ひとりの子どもに合った診断と治療が可能になりました。