最後に治療についてお話しします。以下は、治療を行う医師向けに、その概要を記載しています。
治療に際して担当医は、子どもと保護者の心に思いを馳せて、実施してください。
治療の導入に際してまず行うことは、ODの発症機序を子どもと保護者に十分に理解してもらうことです。重症のODの子どもは強い不安を持っています。
強い症状に対する不安、周囲から仮病扱いされることへの苛立ち、さらに親子関係における様々な葛藤、学校生活でのトラブル、学校不信といった心理社会的背景を抱えています。
医療者は、このような子どもの心のうちを理解した上で、ODとは、どのような病気なのか、メカニズムも含めて十分に説明する必要があります。
たとえば、検査結果の血圧記録を示して子どもに説明すると、説得力があり、子どもは自分の症状の原因を知ったことで、ずいぶんと安心します。子どもと医療者の信頼関係が出来て、その後の治療がすみやかになります。
一方、保護者に対しては、OD症状を単なる仮病と見なさないように、説得します。
ODの子どもは、放っておくと一日中、ごろごろして、テレビやゲームをしています。
勉強の集中力はひどく低下するので、周囲の大人はどうしても怠け癖と見なしてしまいます。
しかし、これは正しい考えではありません。
親に対しては、『決して焦らず、子どもを信じて見守る』ことの重要性を説得しましょう。
非薬物療法で改善しない場合、あるいは、起立保持が困難で日常生活に支障を来たしている重症例では、薬物療法も併用します。
薬物療法を世界的に見ると、現在、最も多く使われている薬剤は、抵抗血管である細動脈と、容量血管である静脈の両方に作用し、かつ副作用が少ないため使い易いです。
また、静脈血管を特異的に収縮させるタイプなど治療薬にはいくつか作用機序の異なるものがありますので、日常生活に支障を来している方は、医師に相談してみてください。