【第38回日本小児心身医学会学術集会が開催されました】 2020.9.17

 

 9月11日~13日、第38回日本小児心身医学会学術集会(大会長 久留米大学小児科 永光信一郎)が開催されました。武漢コロナの影響でWEB開催となりましたが、例年より多くの参加者で盛り上がりました。

 起立性調節障害の学術発表に関しては、一つのシンポジウム(4演題)と一般演題(7演題)、合計11演題の発表がありました。発表内容は、起立性調節障害の診断、心理社会的なサポート、学校教育との連携、家族への対応、deconditioningの影響など、包括的に議論がなされました。

 

以下のサイトから、どなたでもダウンロードが可能です。

http://www.nksnet.co.jp/jspp2020/index.html

 

起立性調節障害に関する箇所を当HPにアップしました。

後日、当サイトで解説を加えたいと思います。

【起立性調節障害の診断に際して知っておいてほしいこと】

                             2020.6.23

<起立性調節障害の診断における新基準の普及率について>

 

子どもが朝に起きづらく遅刻や欠席をくりかえすと、病気でないのか心配になって、ネットで情報を探されたことがあると思います。起立性調節障害と検索すると約70万件以上がヒットしますが、多くは簡単な病気の解説が記載されてあり、少し詳しく記載しているサイトには、診断方法が書いてあります。

 

最近の正しい診断方法は、日本小児心身医学会が出版している小児起立性調節障害診断・治療ガイドラインに記載されている診断基準に基づく方法です(新基準)。

その一方で、1960年代に起立性調節障害研究班という製薬会社がバックアップした研究会があり、その研究会が作成した診断基準(旧基準)が40年以上の長きにわたり使われていました。

 

新基準と旧基準の大きな違いは、新基準では科学的根拠(エビデンス)が明確にされたことです。旧基準は自覚症状だけで診断ができるので便利なのですが、診断の精度が悪く、起立性調節障害でない子どもが診断されることになり、またその逆もあり、医学会で混乱が起こった時期がありました。その経緯の詳細は、『起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応(中央法規出版)』、p24~に記述があります。

 

この問題点を解決するために、日本小児心身医学会では精度の高い診断基準(新基準)を作り、2007年に発表しました。その後、同学会は、新しいガイドラインの普及活動に努め、すでに13年が経過しました。現在、全国の多くの医療機関では新基準を使って診断していただくようになってきました。また医学教育の中においても、同学会からガイドラインが出たことで、起立性調節障害が小児医学で重要な疾患という位置づけがなされるようになりました。

 

しかし今でも旧基準を用いて診療をしている医療機関があるのも事実です。どの程度なのか、実情を調べることが難しいため、インターネットで起立性調節障害を検索してみました。

 

その結果、ネット上にみられる新基準の普及度は、

医療機関41件中、新基準を採用している機関は23件(56%)、旧基準は16件(39%)、一部新基準を採用は2件(5%)でした。

新基準の普及率は医療機関の約6割程度です。

 

ウエブサイトは新しく更新されていない場合もあるため、この割合が事実と若干異なるかもしれませんが、まだ旧基準で診断している医療機関があると言えるでしょう。

 

たしかに新基準は、新起立試験を実施する必要があり、医療機関の負担になることもありますが、少しでも良い診断基準の普及が望まれます。

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       【 新しい研究のご紹介 】

                          (2018.10.4)

ある保護者会では、複数の大学病院と協力してODの子どもたちが参加できるサマーキャンプを行っています。楽しいだけのキャンプではなく、しっかりとした科学的根拠に基づいた医学的キャンプです。大阪医科大学、関西医科大学の小児科医が専門的な視点から教育的プログラムを企画し子どもたちの心とからだの健康を回復する医学的支援を行っています。

 

キャンプに参加することで、子ども達の自律神経機能が改善しているのか、心身への改善効果があるのか、科学的根拠が求められます。そこで小児科医達は、子どもたちの協力を得て安全な検査を行い、改善効果を調査しました。その結果、キャンプに参加した子どもたちでは心身状態が改善されることが分かりました。その内容が以下のように日本小児心身医学会学術雑誌に報告されましたので紹介します。今後もこのような科学的根拠に基づいた治療法の開発が望まれます。

 

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起立性調節障害キャンプ(2)と自律神経機能検査および心理テストによる評価

 

著者:吉田 誠司, 田中 英高, 川端 康雄, 柳本 嘉時, 神原 雪子, 東 佐保子, 西藤 奈菜子, 橋本 文, 河村 仁美, 八島 麻美子, 増田 直哉, 水谷 翠, 中尾 亮太, 岡本 直之, 梶浦 貢, 松島 礼子, 石崎 優子, 金 泰子, 竹中 義人, 寺嶋 繁典

 

子どもの心とからだ 2018年第271Page59-64

 

抄録抜粋:起立性調節障害(OD)は、自律神経系による循環調節不全と心理社会的因子が主な発症要因となる心身症である。OD患児らがキャンプを経験することで、家庭・学校環境から離れた自然体験によるストレス軽減、社会体験・生活体験・チャレンジ体験による自己肯定感・自己効力感の向上、が期待される。また、患児同士で親睦を深め、疾病への理解を深め、不安の軽減や、自主的な疾病管理に向けた行動変容も期待できる。OD患児を対象とした療育キャンプは国内では他では実施されていない。2回目となる今回は中学生16名を対象として23日で実施しその効果を心身医学的に評価したところ、心身両面への治療介入となる療育キャンプは有用であるとの結果が得られた。

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2018年5月23日、日本小児心身医学会より、ODに関しての声明が発表されました。

以下、日本小児心身医学会より引用。

   http://www.jisinsin.jp/#alternativetherapy

 

<起立性調節障害(OD)に対する整骨や整体などの代替療法の効果についての声明>

最近、インターネット上で、整骨や整体などの代替療法が起立性調節障害に効果があると宣伝するウエブサイトが急増している。ODの本質的な病態は起立や坐位における、循環動態、および脳循環や脳代謝機能の異常である。日本小児心身医学会は医学中央雑誌等による過去の文献検索を行ったところ、現時点(2018年5月)で、整骨や整体などの代替療法がODの本質的病態を改善するとした科学的根拠(エビデンス)はなかった。すなわち、これらの代替療法について的確な研究デザインによって明確なエビデンスのある研究報告がこれまでに存在しないからである。
 本学会は、本年1月に、ODに対する各種サプリメントの無効性について警鐘を鳴らしたところであるが、上記の代替療法についても同様の注意が必要である。患者団体から懸念の声が多数寄せられているため、ここに再度、警鐘を鳴らす。
 ODに対するエビデンスのある治療については、本学会編 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン、および専門医向け小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン2011を参考にされたい。なお、当学会では、ODワーキンググループにおいて今後もODに対する効果的な治療について検討する。

(2018.5.23更新)

 

<起立性調節障害(OD)に対する各種サプリメントの効果について>

日本小児心身医学会は現時点(2018年1月)で、ODの起立時の循環動態、および脳循環や脳代謝機能を改善するサプリメントは存在しないと考える。その理由は、各種サプリメントについて的確な研究デザインによって明確な科学的根拠(エビデンス)を示した研究報告がこれまでに存在しないからである。インターネット上では、さまざまなサプリメントに効果があるように宣伝されているが、いずれも起立性調節障害に対するエビデンスはないので、注意が必要である。患者団体から懸念の声が多数寄せられているため、ここに警鐘を鳴らす。
 ODに対するエビデンスのある治療については、本学会編 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン、および専門医向け小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン2011を参考にされたい。
当学会では、ODワーキンググループにおいて今後もODに対する効果的な治療について検討する。

(2018.2.1更新)